想いとともに住み継ぐ家
涼風と田園風景 設計:田中・清水/施工:時光/大工:吉房
田園風景の中に建つ3世代6人の家
岡山市南部の田園地帯。遠くの山まで遮るものなく田んぼが続く、広々とした風景の中にEさま邸は建つ。
もとは築80年以上になるご主人の実家があり、お父さまがひとりで暮らしていたが、Eさま家族もお子さんが増えて自邸を持ちたいと考えるようになり、3世代6人で暮らせる家へと建て替えることにした。実家は母家と離れからなり、離れのほうは残して新居とつなげている。

離れは軒下に広い土間のある、昔ながらの農家の造り。敷地南側には立派な和の庭があつらえられており、外観はこうした旧家の佇まいになじむような、落ち着いた和テイストを基本とした。
母屋を解体すると、土中からはたくさんの延べ石が掘り出された。離れの前から玄関まで続く広いアプローチは、その延べ石をきれいに敷き直して作られている。
南の縁側からはこだわりの庭と田園を眺めることができる
廊下を中心に、南の居室と北の水回りを分離
東西にのびる廊下が、移動をスムーズにさせる
敷地は東西に非常に長い形状。広大な南面にリビング、多目的室、ランドリー、お父さまの部屋を並べ、北側には一直線に水回りの動線を置いた。キッチンなどの生活空間と通路が兼ねられてしまうことを避け、中央に廊下を設けて、南北のゾーンを明確にわけている。

多目的室としてリビングと独立した1室を設けたのは、将来的にそこを主寝室にするため。1階に寝室を設けておけば、いずれお子さんが巣立って夫婦だけの暮らしになったときに、1階のみで生活を完結できるという設計士の考えによるものだ。
「それまで寝室は2階という思い込みがありましたが、提案を聞いてなるほどと思いました。親子で2階に寝ている今でも、1階に1部屋あることで、おもちゃを散らかしていいスペースをわけられて便利です」と、奥さまは話す。

長い廊下を中心に、南回りにも北回りにもぐるぐると回遊できる。忙しい家事や身支度の時間にも6人がスムーズに動けることはもちろん、「子どもたちが家の中で追いかけっこしたりかくれんぼしたり、のびのび遊べるのがいいですね」とご主人は目を細める。
子供たちの遊び場は将来の主寝室に
白い壁と石張りの床で清潔感のあるランドリー
趣味のアクアリウムと眺望が楽しめるこだわりの部屋
人の行き交いに邪魔されないキッチン
上質な天然木にブラックを効かせたインテリア
建物の東半分は2階がなく、平屋建ての構造。これを活かし、開放感のある勾配天井のリビングダイニングが作られた。
現し梁の力強さに負けない存在感を放つのは、真っ黒な石張りのアクセントウォール。合わせてキッチン前壁のタイルや水回りの床、手洗いのボウルなど各所に黒色のアイテムを取り入れている。
キッチンや背面収納などの造作は落ち着いた濃い色味のブラックチェリー、床はチーク材を使用。上質な天然木の質感にブラックを効かせ、重厚感のあるメンズライクなインテリアに仕上げた。

目につきやすいキッチンは、収納扉とロールスクリーンで生活感をサッと隠せるように。どちらも家事の最中はフルオープンにしておけるので、見やすく取り出しやすい。
キッチンの向こうに洗面が続き、その奥に独立した脱衣室を配置。コンパクトな室内で、収納量を確保しつつ空間のゆとりも得られるよう、収納棚の奥行きは入口側ほど浅くカットされている。
随所に散りばめられた黒色が空間のアクセントに
遮るもののない広い眺望が一番の贅沢
大きな窓からは田園からの涼風が吹き抜ける
この家の一番の魅力は、なんといっても南面の眺望。目の前の広大な田はお父さまが耕しているもので、思い切り窓を開け放っても、外からの視線は一切入らない。
リビング南面はもちろんその利点をいかし、壁面いっぱいを窓に。開放感を最大に得るため、左右に引き分けるカーテンは用いず、断熱ロールスクリーンを天井のカーテンボックス内にすっきりと納めた。

北面は用水路と細い道路に接するが、その向こうはこれまた一面の麦畑。
キッチン横のカウンター前に真四角のピクチャーウインドウを設け、麦畑の風景を絵画のように切り取る。
窓外の植栽については、「こちらがお願いしていないのに、『きなり』さんがいつの間にか木を植えてくださっていました。聞けば、電信柱が見えるのを植栽で隠れるようにしてくれたそうで、そんな気遣いも本当にうれしかったです」とご夫婦は笑顔で話す。

南北2面に気持ちよく視線が抜け、さわやかな風が通り抜ける。
お父さまが丹精込めて育てる稲が、季節の深まりとともに豊かに実っていき、そんな風景を眺めながらお子さんたちも育っていく。
手元を照らすライトで勉強スペースにも
家に帰ると窓から差し込む光が出迎える
小物は収納し、上品な空間に
シューズクロークには家族の思い出を眺められるギャラリースペースを
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