TOP家づくり物語杉陽の家

遠くても、ぜひ「きなり」で建てたい

アクセントの縦格子が映える外観

兵庫県の中南部に位置する小野市。なだらかな山々を望む集落に、Fさま邸は建つ。
「きなりの家」の通常の施工エリアを大きく超えた場所だが、コスト面なども承諾の上「それでもぜひ」と依頼して家づくりが実現したという。

「無垢の木をたくさん使った、雰囲気のいい家に住みたいなという思いがあったんです。それで1年以上かけて、神戸や大阪まであちこちの工務店をあたったのですが、なかなか決定には至らなくて。そんなときにInstagramで『きなりの家』を見つけて、一目でここだ!と思ったんです。私は実家が倉敷なので、岡山はなじみの地。すぐ見に行って、やっぱりここ以外にないと思いました」と、奥さまはいきさつを話す。

細い廊下からのダイナミックな広がり

ひとつの空間に居場所を点在させる

敷地はご主人の実家の隣。ご実家は農業を営んでおり、敷地のすぐ南に倉庫が立ち、トラクターなどの出入りもある。公道からの進入路が狭く、敷地内で車を転回させるスペースも必要となる。
こうした条件の中で、できるだけ1階に生活空間を集約させつつ、のびのびとした広がりを感じられる住まいとなるよう、プランが立てられた。

涼やかな縦格子の入ったエントランスから中へ。屋内に入るとすぐに目線は行き止まり、玄関ホール周辺はやや狭小な印象を受けるが、これはあえての設計。細い廊下を抜けると視界は一気に開けて、悠々とした勾配天井の大空間が広がる。

南面はほぼ全面が窓になっており、風景と室内とが一体に溶け合うよう。
特に倉庫の上に視線を抜く高窓は圧巻のワイド感で、5面の窓の端から端まで青い空が広がる。奥のダイニングの窓は、風景を四角く切り取るピクチャーウインドウ。庭の向こうは緑豊かな野山で人目が入らず、カーテンのいらない窓に、夜は月が映るという。

床は節ありのスギ材。大黒柱が吹き抜けの上まで伸び、東西方向に太く長くわたる化粧梁と美しく交差する。天井には何本もの垂木が並び、壁を貫いて軒先まで続く。
「大きな材をどーんと見せた、木の力強さを感じる仕上がりがFさま邸の特徴ですね。『きなり』の本領が発揮された家だといえます」と、担当した設計士は語る。

コンパクトでも使いやすい工夫が詰まった玄関

視線が抜けることで面積以上の広がりが生まれる

ごろんと寝ころぶと杉の美しい木目が映る

隣家が見えない場所に窓を配置する

家族がひとつに集える家

階段の1段目を兼ねる畳コーナー

メインルームは大きなひとつながりの空間だが、その中にはいくつも要素が詰め込まれ、いろんな居場所がゆるやかに集まっている。

南面の一部は土間風のダウンフロアになっており、これから飼う予定のワンちゃんのスペースになるという。
ピクチャーウインドウの脇には、屋久杉の一枚板で作られたダイニングテーブル。その横に、タモ材で造作されたキッチンが並び、カウンターはそのまま畳コーナーの腰壁へと続いていく。壁面に張られたタモ材の流れるような木目が、造作の水平ラインの美しさをいっそう引き立てる。

畳コーナーも充分な広さが確保され、小さな娘さんがお昼寝したり、カウンターで奥さまがカフェタイムを過ごしたりと、日常のなかで家族みんなが心地よく使える空間に。小上がりになったコーナーは階段の1段目を兼ねており、お子さんが大きくなっても、家族のいる場所を通ってから2階へ上がれる動線が作られている。

たくさんの居場所がありながらも、駆け回れるようなのびやかさを感じられるのは、ソファを置いていないことも大きい。
「無垢の床が気持ちいいから、どこにでも座ったり寝転んだりしたらいいかなって。腰掛けになる段差もあちこちにありますしね」と奥さま。
ご主人は「とにかく家にいる時間が心地よすぎて、休日もあんまり外に出かけなくなりました」と、穏やかな表情を見せる。

手間を惜しまず、よりよいものを目指して

デザイン性と機能性を兼ね備える造作収納

遠方での施工ではあったが、住み手と作り手の双方で協力し、家づくりはつつがなく進んでいった。担当した大工は数ヶ月のあいだ現地近くに泊まり込み、1人で毎日コツコツと仕事に打ち込んだという。

「プランや建築の途中で『やっぱりこうしたい』などと意見を出すこともあったのですが、あれこれ検討した結果、どれも結局最初に提案いただいたものに落ち着いていくので、最後のほうはもうおまかせに(笑)。おまかせしていたら、例えば玄関のニッチが無垢板仕上げになっていたりとか、私たちの知らない間にさらに細かに手を加えていい感じにしてくださっているんですよ。
設計士さんも大工さんも監督さんも、みんな家づくりが本当に好きで仕事をしているんだなと感じて、やっぱり『きなり』さんにお願いしてよかったと、改めて思いました」と、ご夫婦は笑顔で語っていた。

外部にも無垢材を使用することでぬくもりが広がる

お子さまと一緒でも安心のゆったりとした洗面脱衣室

グレーの壁紙と木目で統一感のある空間に

空も緑も望めるダイニングでカフェのようなひと時を