薪ストーブとゆるやかな時間を紡ぐ
木漏れ日と寛ぐ 設計:石田 博/施工:藤原 幹也/大工:守屋 勝
大きな吹き抜けと薪ストーブ
3人のお子様がいるIさん家族。ひとり、ふたりと家族が増え、ご夫婦で働きながら子育てする毎日の中で、自分たちが本当に暮らしやすい理想の住まいのかたちをずっと描き続けてきたという。

のびのびとした吹き抜けリビングに薪ストーブのある家、というのがIさんの一番の希望。その想いの通り、天井は驚くほど高く、圧倒されるような大空間が広がる。ガラス張りになった南面の中央には、薪ストーブがどっしりと鎮座。そこからまっすぐ天井に伸びる煙突は、5mほどにもなる。

吹き抜け上には、南東の2面にわたって大きな高窓が入り、見上げれば青い空。「気持ちがいいので、なにかと上を眺めていますね。東側にある用水路の水面の光が、天井にゆらゆら映ってきれいなんですよ」と奥さまは話す。

吹き抜けの開放感と対比して、天井のあるダイニングやキッチン、和室は落ち着いた雰囲気に。リビングのソファの頭上にパーゴラを架けたのも、広がりをほどよく抑えてくつろぎ感をもたらすためだという。
吹き抜けと高窓の圧倒的な開放感
空を見渡すあそびの空間
どこまでも広がる空を一番近くに感じる特等席
吹き抜けはIさんの要望だが、天井を通常以上に高くしたのには理由があった。それは、東への視線の抜け。敷地は分譲地の突き当たりで、1階は芳しい眺望は望めないが、東面の高いところからは唯一、遠くの山までさえぎるものなく視線が抜ける。よい眺望がとれるところまで窓の高さを上げ、この窓をゆったりと眺められる位置に、本棚とカウンターのある小さなスタディコーナーを設けた。

本棚コーナーは、当初からのご主人の希望。「子どもたちと一緒に本を読むのもいいし、子どもたちを寝かしつけた後、そっとここに出てきてひとりで過ごす時間もいいですよ」とご主人はほほえむ。

建物全体の背が高く、容積もかなりのスケールとなる。そのため、道路に面した玄関回りは平屋にして高さを抑え、見た目の圧迫感を軽減するよう工夫している。
ソファ上のパーゴラが開放的なリビングの中にくつろぎをもたらす
あえて天井を低くし空間に落ち着きとメリハリを与える
薪ストーブと緑をゆったりと眺める
高さを感じさせないよう工夫された和モダンな外観
実用重視でストレスフリーな毎日
オリジナルで造作した収納家具類も、この家の重要な要素。自分たちが使いやすいよう、細部までこだわってオーダーしている。

サニタリーは洗濯家事室と脱衣室にわかれ、その間にぴったりと収納を造作。引き出しはどちら側からも開けられるようになっており、洗濯室で収納した衣類を、脱衣室から取り出すことができる。「子どもの保育園のおむつ入れがこの仕組みになっていて、ぜひ真似したいと思っていたんですよ」と奥さま。あまり例のない造作とあって、設計士とのお互いのイメージの共有には特に心を砕いたという。サニタリーとつながるウォークスルークローゼットには、将来的に個人用の着替えスペースが必要になると考え、カーテン付きのブースを2つ設けた。

またキッチンの背面収納にもひと工夫。半面ずつしか開かない引き違い戸を避け、全開して中を見渡せる3枚建ての引き戸に。引き込み部分がデッドスペースになるのを、現場のアイデアで側面から出し入れできる収納棚にした。ダイニング背面には、一見アクセントウォールに見える木のパネル。スライドさせると、予定表やプリントを貼ったマグネット壁が現れる。
大容量の背面収納は横貼りの突板で統一し家のデザインの一部に
自分らしい家で心豊かに暮らす
建具の開閉で独立した客間にも、リビングとつながる憩いの場にも
南の庭に張り出した和室は、リビングとつながりながら「離れ」の雰囲気も漂わせる、趣深い別空間。ここは設計士が「私のやりたいことをやらせてもらいました」とのことで、昔ながらの和室の造作を丁寧に作り込んでいる。現し梁の天井は途中で切り替えられ、杉の赤身と白太を交互に張った勾配天井がゆるやかに下る。見切りに入れた材は、宮大工の技術をもつ棟梁が釿(ちょうな)掛けで仕上げたもの。野趣あふれる釿の跡が、さりげない意匠となっている。障子を開ければ、緑あふれる庭。心地よい風が通り、青畳がふわりと薫る。

「前の住まいでの生活でストレスを感じていたことが、ぜんぶ解消できました」と、晴れやかに語る奥さま。ご夫婦は毎日の生活動作をイメージし、どこになにがあれば便利かを考え、ひとつひとつ伝えて形にしていった。「私たちは要望を言うだけ。『きなり』さんはそれをきちんと拾ってくれた上で、明確な理由をもって新しい提案を加えてくださり、全体のバランスをとってくださいました。そこが本当によかったです」とご夫婦は話し、そろって深い満足の表情を見せていた。
アイロン掛けや洗濯物を畳めるカウンターを備える洗濯室
脱衣室と洗濯室の両側から引き出せる収納棚を造作
ガラスに映る空や光に視線が楽しい
住宅街にありながら樹木や花草が季節の癒しを与える
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