TOP家づくり物語緑そよぐ和の邸宅

白壁と焼板と倉敷格子

焼杉の板と白い壁のコントラストに木製の格子がアクセントとなっている

黒い焼杉板と白壁が、きりりとしたコントラストをつける和の住まい。
庭先ではたくさんの木々が新緑を芽吹かせ、住宅地の一角に憩いの風景をつくっている。
「通りすがりの人にもよく『いいおうちですね』と声をかけていただけるんですよ」と奥さまは微笑む。

当初より、木造の和風建築がMさまご夫婦の希望。「いくつかの地元工務店に資料請求したところ、『きなり』さんはすぐにスタッフの方が直接資料を持ってきてくださり、そこでまず心を惹かれましたね。家の雰囲気も気に入りましたし、何度かやりとりさせてもらって、スタッフさんの人柄がよくて話しやすかったというのが、やっぱり一番の決め手になりました」とご主人は話す。

土地は早いうちに決まっていたが、造成が完了するまで2年も待つことになり、その間にじっくりとプランを練り上げた。Mさまからは吹き抜けのリビングや水回りの配置といった大まかな要望を伝え、あとはほぼ設計士の提案に任せたという。

内外の入り混じる土間空間

室内を隔てる土間は気持ちを整えるかの様な演出をもたらしている

敷地は、コの字型に4区画が並ぶ分譲地の東奥。道路の行き止まりに敷地の東南角が接し、間隔は比較的ゆったりしているものの、東西南北すべての面に隣家が建つ。
ともすれば閉塞感の出やすい敷地条件において、プライバシーを守りつつ、いかに抜け感をつくるか。プラン時点で敷地は未完成、周囲にどんな家が建つのかもわからない中で、設計士は想像力を働かせてベストな答えを探っていった。

前面の圧迫感を減らすため、できるだけ南の庭を広く取ることは必須となるが、もちろん同時に、室内の広さも充分に確保したい。いろいろと試行錯誤した結果、当初はリビングと接する予定だった和室を、西端に独立して設けるプランが生まれた。

玄関からまっすぐ奥へ、長い通り土間が伸びる。
玄関の一部でもあり、廊下のようでもあるその土間の、右に和室、左にトイレと洗面を配置。和室に行くにもトイレに行くにも、いったん土間に降りてまた上がるかたちになり、ちょうど昔の家の「離れ」のようなおもしろい構成となった。
和室の落ち着いた趣は、まさに離れの茶室といった風情。和室のためだけの小さな庭があつらえられ、情趣あふれる贅沢な空間がつくられている。

和室の庭木は玄関からも覗ける癒しの空間

料理に集中出来る壁付けのキッチン、囲われた中にも開放性を持たせている

躙り口から入る書斎は天井の低さが心地良い

シンプルな洗面は建物の中心にありアクセスの良い配置としている

目線の変化を楽しめる

明るく木の温もりと伸びやかさを感じる吹抜け空間

登り梁があらわしになったリビングは、木の迫力を感じるダイナミックな空間。吹き抜け周囲を太い梁がぐるりと囲み、背割りの入った通し柱が天井まで貫く。
掃き出し窓から見える庭は、奥行き感を強調するように植栽が配置され、西隣の家の庭越しに遠方まで視線が通る。上には空の見える高窓、下には庭の見える地窓。周囲の視線を避けながらも四方に視線の抜けをつくり、のびやかさを感じられるよう工夫されている。

もうひとつ設計者が意識した点は、ひとつながりの大きな空間の中で、いくつも高さの変化をつけること。
リビングは大きく吹き抜ける一方、ダイニングは2階床の構造がそのまま天井となり、低く落ち着いた雰囲気がつくられている。
テレビのある壁の裏側に階段を配置し、スキップフロアのような踊り場から階下を眺められるのは、お子さんたちにとっても楽しい造り。
勾配天井の頂上部に位置する寝室は、ベッド代わりに小上がりの畳を設け、畳を降りればご主人の書斎へとつながる。吹き抜けを見下ろすカウンターデスクと、背面にはCD棚が造りつけられ、階下と互いに気配を感じながら趣味の時間を過ごすことができる。

手間を惜しまず、美しさを極める

存在感のある木製の格子、パーツで分けず一体型で造り上げた

切妻の屋根面は南に向かってぐっと下がっていき、周囲の家に比べて一段低く、安定したフォルムを描く。
モノトーンの外壁にアクセントをつけるのは、長短のついた独特の意匠が特徴の「倉敷格子」。格子は横幅5m近くもあるが、職人は美しさを極めるために一切継ぎ目を入れず、その長さのまま慎重に吊り上げて施工したという。

白壁と焼板とが切り替わる部分には、ステンレスの見切り材が細く入り、すっきりとキレよく納められている。
「完成してみればなにげない部分かもしれませんが、実はこういうところを、職人さんはすごく考えて作っているんですよ」とスタッフ。その説明を聞いてご夫婦は改めて感銘を受けた様子で、「私たちが気づいていないようなところまでこだわって、一生懸命よりよいものにしてくれるというのが、本当にうれしいですね」と語る。
庭の植栽なども予算の範囲を超えて、庭師自身が納得いくまで作り込んでくれたという。すみずみまで妥協なく丁寧に作られた住まいは、どこにいても心地よく、暮らしにやすらぎをもたらしてくれる。

階段下を利用したシューズクロークも備える

引出し収納付きの小上がりが就寝スペースを兼ねる

ハイサイド窓の光が柔らかく回り込むリビング

木立の中に佇むような造園は一時の憩いを与えてくれる