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クラシックモダンリビング

使い込むほどに味わい深い「本物」へのこだわり

桜とお城を望む河畔の邸宅

縦格子とゆったりとした空間が家の個性を表す玄関

土手沿いを桜並木が彩る、河畔の閑静な住宅地。重厚な屋敷が建ち並ぶその一角に、Mさん邸はある。

玄関は土間だけで部屋ほどもあり、広々とした板張りの廊下が長く奥へと続く。南北2つの庭にはせせらぎが作られ、家の内も外も、あらゆる空間が充分なゆとりをもって備えられている。

どこから見ても圧倒されるほどの邸宅だが、しかし詳細を伺うにつれ、単に贅を尽くした家とは違うということがわかる。奥さまいわく「家はライフワークなんですよ」。さかのぼれば子どもの頃から住まいに高い関心があったといい、以来長い時間をかけて、住宅に対する自分なりの価値観を築いてきた。結婚後はご夫婦で少しずつ家具などを買い集め、いつか建てる自邸への想いをあたため続けてきたという。

満を持して家づくりがスタートし、一流といわれるメーカーや工務店をいくつも回った末『きなりの家』に辿り着いた。「コンセプトハウスがすごくよかったんです。年月を経た木の感じがとても素敵で、長く愛着をもって住み続けられる家になると思いました」。

制限が強い敷地ながら、長期間様々な視点からプランニングを練り、着工してからも納得いくまで何度も修正を重ねた。更に、着工から引き渡しまで、きなりの家でも前例のないほど時間をかけて建築された。

住まいの軸となる廊下の存在

異なる木材を使い分けた贅沢な廊下は、先へ誘うおもてなしの空間に

この家の格式を表すのが、広い玄関と、そこから客間までの長い廊下。上り框から続く廊下は濃色のチーク材だが、突き当たりを折れると一転、清々しいヒノキ張りとなる。奥へと伸びた廊下は坪庭を囲んでさらに折れ、上質な床の間をあつらえた和室へと客人を導く。

「たとえ部屋が狭くなっても、きちんとした廊下は絶対に必要でした」と奥さま。この廊下があることで、家の中のどの場所にも、リビングを通らず行くことができる。「部屋を通路にしたくないんです。そういう考え方など、最近の住宅設計と逆行している部分は多いかもしれませんね」と言う。

玄関は客人を迎えるにふさわしい品格を備えるが、決して来客専用の形式的なものではない。「自分たちの家なんですから、自分たちが堂々と一番いいところを使いたいじゃないですか」と奥さまは話し、泥んこになって遊ぶお子さんたちも当たり前にそこを出入りする。また、間口や廊下幅の広さはバリアフリーの目的もある。

廊下に設けられた窓が、各部屋に光と風を届ける

和室の雪見障子越しに見えるよう設けられた坪庭

水に強い木材を使い、家のデザインと統一した洗面所

白を基調にブルーのタイル張りがアクセントに

心やすらぐあたたかな上質感

全面窓から望む緑と木本来のぬくもりが調和したリビング

板張り天井に間接照明を入れたリビングは趣深く、どこか懐かしさを感じる雰囲気。建具の枠や框、巾木などはあえて昔風にがっしりと太く、木部は家具やキッチンまでできうる限り無塗装の無垢材に。工事の最中でも気になる点があれば妥協なく変更をかけ、職人や設計士もまた、求められる以上の技で返したという。

キッチンはオーストリアのメーカー『TEAM7』でフルオーダー。シンクを2つ備えた大きなL字のワークトップは、ステンレスの一枚板で継ぎ目なく仕上げた。設計士からは家電類を扉内に収める背面収納が提案されたが、「生活感を隠す必要はない」との考えでオープンになっている。

リビングとダイニングの間は、将来的に生活空間をコンパクトにしていけるよう、建具の仕切りを設置。太い格子を入れたガラス建具もどことなく昭和を思わせる印象で、空間に味わいを添えている。

愛着をもって住まうよろこび

お気に入りの家具と同じように選び抜いた天井や壁が唯一無二のインテリアに

リビングの仕切り戸をはじめ、建具類には家づくりの中でも相当に力を入れたという。
1階の大部分の建具は、1本の木からわずかしか取れない柾目のブラックチェリー材をセレクト。壁の一部は建具と意匠がそろえられ、締め切れば美しい縦格子が整然と壁面に並ぶ。熟練職人の手による造作建具は、クローゼットドアや階段下の収納扉に至るまですべてに及ぶ。「丁寧な手仕事が本当にすばらしくて、開け閉めするたびに幸せな気持ちです」と奥さまは微笑む。

また、ご夫婦で1点1点選び抜いた家具や照明類も、この家の大きな魅力だ。何年も前からコツコツとそろえていた一枚板のダイニングテーブルや『カイ・クリスチャンセン』のチェア、『ドムス』のブラケットライトなどが、あたたかな家族の空間にしっくりと収まる。仕事に子育てにと多忙な生活だが、ふとした合間にテラスでお茶を飲んだり、お気に入りの家具を探したりと、楽しみはたくさん。「家が一生の趣味だから、他にはなにもいりませんね」とご夫婦そろって満足の表情を見せていた。

取材担当 吉田

持ち寄ったこだわりの照明で隅々まで好みの空間に

リビングに馴染む天然木のオーダーメイドキッチン

職人によって造作された縦格子が家に美しい統一感を生む

閑静な街並みに馴染むよう、モダンながら落ち着きのある外観に