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回遊する平屋

光とけこむ南東向き

遠方からリモートの家づくり

段になった天井は光をやわらかく反射し、空間の広がりを感じさせる工夫が施されている

ご主人の仕事の都合で、数年おきに転居を経験してきたNさまご家族。当時は家族そろって他県で暮らしていたが、下のお子さんが小学校に上がる年に合わせて、奥さまの地元である倉敷に、家族の本拠地を定めることを決意した。

遠方に住みながら倉敷での家づくりを進めなくてはならないため、当初は全国展開のハウスメーカーで建てるしかないと考えていたそう。しかし大手メーカーを何社か訪ねたものの「なんとなくしっくり来ず」、無理を承知で岡山の工務店も検討してみようということになり、そこでご夫婦ともに目に留まったのが「きなりの家」だったという。

帰省の際にコンセプトハウスを訪ねると、「ここで建てたい」との気持ちはより強いものに。
「上質な木がふんだんに使われていて、大きな窓から光を取り込む空間がとても素敵。これまで見てきた家とは全然違うと感じました」と、ご夫婦は目を輝かせる。

現地に立ち、見て感じることを大切に

キッチンからの眺めは、家づくりの時に抱いた理想の空間を映す

100数坪の敷地は南北方向に長く、北・東・南の三方を道路に囲まれている。
他メーカーから出されたプランはすべて、南全面をリビング、北側に個室や水回りをまとめ、東側に玄関を配置したもの。ある意味セオリー通りの設計といえるが、「きなり」の設計士の見立ては、他とはまったく異なっていたという。

南面は道路を挟むものの、すぐ向かいに2階建ての家が建つ。窓を開けても目立って見えるのは前の家という状況から、南面の西側半分に水周りと収納、個室を配置した。
いっぽう、敷地の南東角を見るとちょうど家と家の隙間が空いており、心地よい視線の抜けがある。設計士はここに素早く目をつけ、南東角に向かってL字形に2面に大きく窓を配置。眺望と光の得られる東北側にメインルームを置き、玄関を北に設ける平屋のプランが提案された。

「設計士さんが実際に現地を見に行ってくれて、その場で考えてくださったんです。他社のプランは敷地図だけを見て考えてもらったものですから、こういう判断はやはり難しいですよね。きなりの設計士さんの『南だからといって明るいとは限らないし、北だからといって暗いわけではないんですよ』との言葉に、ハッとさせられました」と、ご主人は話す。

上質をまとうエントランスが客人を中へ誘う

キッチンの左右にある通路で回遊するようにスムーズな動線に

高い位置の窓からは朝日が差し込む

ころんとした陶器とシックな色味の壁紙は落ち着きのある空間を演出する

中庭をL字に囲む平屋の住まい

外部の視線を遮る植栽や外壁で、豊かな光だけを取り込む贅沢な空間に

板張り天井のリビングは、上質な木の素材感で魅せる、落ち着いた空間。南の壁面すべてがガラスになり、明るい芝生の庭が視界いっぱいに飛び込んでくる。
東面は通りの視線を避けて窓を天井際の高い位置に。北面には坪庭の見える窓を設け、やわらかな光を取り込む。

リビングとL字に向かい合う位置には、書斎兼お子さんの宿題スペースを配置。目の前に庭が広がる窓辺のカウンターデスクは、リビングとはまた違った居心地のよさがあり、お子さんも大好きな空間だという。
キッチンに立てば、目線の先はちょうど庭から遠くの空へ。リビングも庭も広々と見渡しながら、気持ちよく家事ができる。

建物中央には1本長い廊下を貫かせ、東側のリビングと、西側のプライベートゾーンとを分離。西側には水回りと収納、物干し場を並べ、機能的な家事動線を作った。
玄関を入って左にはすぐ和室を設け、お客さまを直接通せる造りに。和室からリビングへと抜けられ、家全体を行き止まりなく回遊できるようになっている。

細やかな感性がもたらす上質な空間

住まい方を考え抜き、家族が憩う時間がより暖かいものに

「きなりさんの家づくりは、間取りや内外装についてだけでなく、視線の抜けをどう作るか、ラインをどうつなげるか、といった空間の見せ方を非常に重視していたことが印象に残りました」と奥さま。
例えば玄関ホール周りは四方の壁の上部を抜き、天井に細木を入れて壁の向こうの空間まで連続させる。またリビングのアクセントウォールも、ガラス窓の外まで同じデザインで続けている。
「こうしたさりげない工夫で、空間の広がりやつながりを演出しているんですね。説明していただいて、なるほどと思うことばかりでした」とご主人は話す。

とりわけNさま邸では、こうした微妙な感覚の部分についてもほとんど県外の自宅からリモートでやりとりしなくてはならず、その点は両者で苦労も多かったという。
「それでも、何度か重要なポイントには自宅まで足を運んでくださいましたし、私たちが帰省しているときにはあちこちOBさんの施工例を見に連れて行ってくださるなど、本当にできる限りのことをしてくださいました」と、ご夫婦は感激の面持ちで語る。

引き続き県外の自宅に残って仕事に励むご主人にとって、この家に帰って家族と過ごす時間はなにより貴重なもの。リビングでゆっくりと庭を眺めるひととき、濃密なくつろぎが満ちていく。

空間の広がりを感じる玄関ホール

普段の生活も大事にしながら来客の事も考えられた動線設計の客間

カウンターデスクは家族のお気に入りの場所に

生活を彩る趣味を楽しむスペースは欠かせない