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2つのリビングを楽しむ家

五人家族の心地よい暮らしを美しく

3人兄弟が駆け回る、子育て世代の家

開放感のある上下ガラス張りの壁面

丘の上に広がる住宅団地の一角。隣家に両側をはさまれた建物は低く、一見コンパクトな平屋建てとの印象を受ける。しかし屋内に入ればそのイメージは一瞬で消え、目の前に展開するダイナミックな空間の広がりに圧倒される。
「見た目と中身にギャップのある家がいいなと。そこはまさに、ねらい通りでしたね」と、ご主人は笑みを浮かべる。

北の接道側から敷地奥に向かって、屋根勾配が上がっていく構造。玄関ホール周辺は平屋のつくりだが、そこから大きな吹き抜けのLDKが広がる。南側の壁面は上下階をまたいで全面ガラス張りとなり、上階は中2階のシアターリビング、下階は半地下のようなタイル床のダウンフロアが作られている。

見るからに洗練された上質感あふれる住まいだが、住むのは実は7歳、4歳、1歳の3人の男の子のいる、子育て真っ最中のご家族。子どもたちがのびのびと駆け回りながらも、生活感はさりげなく隠され、整った状態がキープされている。
「もちろん、住む方がこまめにきれいにされていることは言うまでもありません。が、まずそのためには、片付けたいときにちゃんと片付く家になっていることが前提ですよね」と、設計士は話す。

すべてのものに、しまう場所を作る

非日常を感じられる半地下の「グランピングテラス」

とはいえ、片付けやすさに関して、特別な工夫があるわけではないという。
「使う場所に、必要な分量の収納を設ける」、ただこの基本が、あらゆるものに徹底されている。

収納計画の軸として、玄関とリビングに、それぞれまとまったスペースを確保。
玄関を入って正面に扉があり、そこから長いL字型のファミリークローゼットが続く。動線に沿って、まずは家族用玄関として靴やアウターの置き場があり、奥に子どもたちとご主人の着替え場所、左へ折れて奥さまのスペースが並ぶ。身支度を済ませながら通り抜け、そのまま手洗いやキッチンへと進んでいける流れだ。

またリビング収納として、キッチン裏にバックヤード的な動線を1本設けるのも、「きなりの家」でよく提案される手法。ここにズラリと収納棚を設け、リビングで使う細々としたものはすべてここに納めてしまう。
さらには階段下やテレビ周辺など、あちこちに小さな収納を配置。いずれも隠し扉のようなデザインで、壁に溶け込ませている。

玄関から続く収納力のあるファミリークローゼット

リビングの収納棚は空間に溶け込むデザインに

お客様用と家族用に分かれる玄関

屋内の印象とはギャップのある外観

2つのリビングと、空の広がる全面ガラス

中2階のリビングから自然を感じる

中2階は大型テレビを壁面に据え、南西2面の壁に沿ってソファを設置。大きな窓から広々とした空が眺められ、西側に座ればちょうど視線の先に山の緑が映る。
その下は、基礎にもぐる形でつくられたダウンフロア。下に降りることでちょっとしたキャンプのような、非日常的な楽しさとくつろぎを感じられるこの空間は、「グランピングルーム」と名付けられている。

キッチンから上下階とも様子を一望できるよう、中2階の床レベルを入念に調整。ゲームをするのは上の部屋、おもちゃで遊ぶのは下の部屋と、フロアをわけることで散らかりにくいというメリットもある。

丘陵地で、南側の家は一段低い土地に立つため、こちらから見えるのは2階北側のみ。さらに、こちらの南の窓面をやや斜めに振って正対を避けているため、互いの視線はほとんど気にならず、カーテンを閉める必要がない。また、斜めに振ることで軒の向きが真南となり、より効果的な日射調節ができるという。
「普通の家とはひと味違う」全面ガラスによる抜け感の演出は、こうした緻密な設計の上に成り立っているといえる。

家族がのびのび過ごせる機能と性能

導線を意識してレイアウトされたキッチン

ステンレスの天板が美しい造作キッチンは、あえてダイニングと離してレイアウト。「周囲をぐるっと回れるので、対面や横並びよりも動きやすいと感じますよ」と奥さまは話す。
サニタリーは入り口部分の角を斜めに落として出入りしやすく。洗面カウンターも斜めに設けることで、天板の広さと脱衣空間の広さの両方を確保している。サニタリーからサンルームが続き、洗濯の動線もスムーズだ。
家族が多いことから、行き止まりやボトルネックのない、回遊性の高い設計が考えられている。

入居してひと夏が過ぎたが、真夏もLDKの空調は中2階のエアコン1台でまかなえたそう。蓄熱床暖房が入り、これからの冬も安心して迎えられる。

日頃は多忙で、家にいる時間は少ないというご主人だが「やりすぎたというぐらい、やりたいことは全部やりました」と満足の表情を浮かべる。奥さまは、住まいに盛り込まれた機能を存分にいかし、効率よく家事をこなす。子どもたちとのにぎやかな時間を楽しみながら、おしゃれで心地よい暮らしを実現している。

取材担当 吉田

広々とした洗面カウンター

サンルームとサニタリーをまとめ効率的な家事導線を確保

印象的な照明が落ち着いた空間を演出

中2階部分の天井の木目を他とは異なるデザインにし、より洗練された空間に