TOP家づくり物語精選された家

街並みの中でひときわ存在感を放つ家

真南に窓が向く建て方

「もともと私がイメージしていたのは、シンプルに徹した真っ白いキューブ型の家。こんなふうに無垢の木をたくさん使った感じの家になるとは、まったく考えていなかったんですよ」と話すOさま。
方向性が変わったのは、奥様のご両親の勧めから。先にご両親のほうが「き」なりの家を気に入り、誘われて行ってみたところ、こんなのもいいなと思うようになったという。
そんな経緯から、必然的にOさまとご両親は一緒に打合せに参加して、一つ一つ家族全員で精選(※念を入れて選びぬくこと)しながら家造りを進めることなった。

その建物は、整然と区画の並ぶ住宅団地にありながら、明らかに周りの家とは異なる佇まい。
周囲の家が土地の形に沿って南西面に窓を向けて建つ中、Oさま邸は方角に沿って真南に窓が向くように建てられている。ファサードは斜め向き、駐車場も三角形になり、建築中から近所の方たちにも不思議がられていたとか。
「提案いただいた図面を最初に見たときは、私達には意味がわかりませんでしたが、設計士の説明を聞くと、きちんとした意図があっての設計だということがわかり、納得できたんです」と、ご主人は話す。

南が閉じた条件下で、明るさと広がりを得る工夫

淡い色のオーク材の床が優しい空間をつくりだす

その意図とは、南を含め3方向に隣家が迫るという敷地条件の中で、少しでも南に長く視線を抜いた空間を造るため。真南はちょうど敷地の角にあたるので、その向きに窓を設ければ、より奥行きのある庭を見せられるという考えだ。東の高窓は遠くの山も借景として切り取った。
東のリビングは、勾配天井にヒノキが張られたのびのびとした吹き抜け空間。3方高窓がぐるりと連なり、住宅地の中でありながら、気持ちの良い開放感を得られる。壁面にあしらったステンレスのボーダーラインが室内の奥行きを強調し、実面積以上の広がりを感じさせる。
軒のあるテラスはリビングの延長として配置。テラスを囲みつつ望むお庭には築山が作られ、豊かな植栽が周囲の家の気配を隠す。

また、2階の部屋からリビングを見下ろせる小窓は、施工の途中で急遽開けてもらったという。
「ダメ元のつもりで相談してみたら快く応じていただけて、やはりそういうところがいい会社だなと思いました」とお父さまも話す。

南東に設けられた大きな窓から見える植栽は隣家の視線を遮る配置としている

テラスの角部を斜めに切り取ることで動線と空間の広がりを確保した

木の色と白系でまとめられたシンプルなダイニングキッチン

東の高窓とステンレスのボーダーラインが奥行きを演出

複数の動線確保が動きやすさの秘訣

お気に入りのカッパー風の石壁(左)と玄関からキッチンにダイレクトにつながる動線

1階は北東側にLDK、南西側に水回りや収納をまとめ、複数の動線を設けて、行き止まりがなくスムーズに回ることができる作りになっている。
玄関から入り、石張りの目隠し壁兼収納の横を抜けると、その先にLDKが広がる。壁と同化して気づかないが、石張りの壁の手前にも扉があり、そこを入るとダイレクトにキッチンにつながる。また玄関のシューズクロークから、ウォークインクローゼットを通り抜けて洗面台の前に出るという、帰宅後のルーティンに沿った動線も確保。これら3本の動線は、建物の中ほどを貫く廊下ですべてつながっている。
テラスを囲むL字型による入隅は斜めにカットし、こちらも動線に配慮している。

他社では総2階の家を検討していたが、「き」なりの設計士の提案で寝室を1階に設けたことは、予想以上に便利だった。2階にも個室を設けたが、今はまだあまり使うことがなく、普段はほぼ平屋の感覚で暮らすことができている。今では寝室を気軽なシアタールームとしても楽しんでいるそう。

納得いくまで検討し、後悔のない家づくり

シアタールームとしても楽しめる寝室

クロスも床材も沢山の種類を使い分け、内装決めにはかなりの時間をかけたという奥さま。住宅設備についても、あちこちのショールームに足を運んで検討した。
「無駄な出費はできないので、何でもとことん考え抜いて決めていきました。「き」なりの方がじっくり付き合ってくださり、急かされないことが一番ありがたかったですね。結局予定より高額になった部分もありましたが、よく考えて納得して選んだ結果なので、後悔がありません」。

また施工中は何度も現場を見に来て、大工にいろいろなことを教えてもらったそう。
「大工さんそれぞれにやり方があり、同じ設計図面でも、大工が違えば仕上がりの印象も全然違ってくるというお話が興味深かったですね」と話す。
オークの床材は、Oさまから特に指定したわけではないが、大工の「この家には淡い色の床が合う」との判断で、色幅のある無垢材の中からわざわざ淡色寄りの板を選って使って貰っているそうだ。

そして設計士とは、互いに意見を戦わせることもしばしばだったとか。
「例えば壁に入れたラインも、私は最初なくていいと言ったのですが、設計士さんは『絶対入れたほうがいいから』と言うんですよ。そんなふうに遠慮なくいろんな意見を出し合いましたけど、結局やってみると、確かに設計士さんの言う通りだと思うことばかり。最終的にはすっかり信頼してお任せしていました」と奥さまは話し、表情をほころばせていた。

小物や内装にこだわった乾燥室

廊下側にニッチを設けリモコンなどが目立たないようにしている

洗面から洗濯乾燥室につながる使いやすい動線

縦長の窓を設けることで広く感じる台形の玄関