TOP家づくり物語展望キッチン

違和感なくリビングとつながる

キッチンの向きを変えたことで目に映る庭の範囲が広がった

10年ほど前に住まいを新築したFさん。手入れの行き届いた緑の庭に面したLDKを中心に、開放感あふれる住まいでの暮らしに満足していたという。

しかし、家族が増え、子どもたちが成長してくると、その食欲に冷蔵庫のサイズが追い付かなくなってしまう。サイズアップに伴い、それまでキッチン背面に収まっていた冷蔵庫を反対側に移動せざるを得なくなり、結果的に動線や使い勝手に不具合が生じることになってしまった。

加えて、もともとキッチンが南のリビング側ではなく敷地東側の庭を向いていたこともあり、「どうせならキッチンの向きを変えられないかな?」というところからリフォームを検討することに。「軽い気持ちでご相談したのですが、すぐにイメージ画を3案ほどいただいて…。冷蔵庫の納め方が目からウロコでしたね」とFさん。

存在感のあるタイル遣いをしながらも、まるで最初からこうあったというように、リビング・ダイニングともスッキリとなじむ、居心地の良いキッチンが完成した。

生活感は隠しつつ、使い勝手はアップ

冷蔵庫は中央にありながらも、趣のある自然石タイルで隠し生活感をなくした

「リビングから家電が見えるのが嫌で」と話すFさん。一番の課題は冷蔵庫の位置だった。

キッチン自体は使い勝手もよく、気に入っていたことから、そのまま再利用して、向きだけを変更。提案されたのは、キッチンと、元からあった壁面収納の間に、新たにアイランドタイプの収納&作業スペースを作るというものだった。

アイランドの右端には自然石タイルで壁を作り、そこに冷蔵庫を収納。リビングからは全く見えないうえに、家族が飲み物を取るには最短の動線となり、使い勝手もよくなった。「雰囲気のあるタイルなので、リビングから見てもデザインとしても素敵ですよね」

さらに、アイランド部分には大きなゴミ箱をそのまま隠してしまえるスペースを確保。キッチンのすぐ後ろに当たる部分には、食洗器からの出し入れを考えて、普段使いの食器類を収納できる引出し、さらに炊飯器の収納スペースも設けた。「スッキリ見えるのに、使い勝手は格段に良くなりました」とFさんも笑顔だ。

既存家具(左)と新設家具(右)は面材の色味をそろえた

元々あった棚は作業の邪魔にならないように出幅を短く切り、見ると思わず笑みがこぼれる飾り棚へ

家族で作業もできて使い勝手も良くなったアイランドカウンター

エンジ色の床タイルがキッチンへと導いてくれる

主役級タイルでわが家だけのキッチンに

精選された床タイルがキッチンを彩る

「実は一番迷ったのは床のタイルなんです」というFさん。キッチンの床タイルで赤っぽいものと言えばテラコッタが多いなか、「『ざらっとしたものは掃除もしにくいし、もっとツヤ感のあるものを』と、設計士さんたちが建材カタログをしらみつぶしにチェックしてくれて…」。最終的に選んだのは、1枚のタイルの中にも表情のある、エンジ色系のデザインタイルだった。

「決めてからも実はちょっとドキドキしていたんですが、いざ完成してみると違和感もなく、リビングとの馴染みもよくて気に入っています」。新築時から床暖房を敷設済みなので、タイルの床でもいつも温か。汚してもさっと一拭きなので、お手入れもラクだという。

キッチンが見えると、家族がつながる

お互いの存在を感じられる配置で心の距離もより一層縮まった

構造梁の影響で天井裏のダクト配置には苦労したものの、冷蔵庫側にレンジフードを配したことで、キッチンの左側にはオープンに。さらに、一部壁の位置を変更し広がりを持たせた。リビングにあった飾り柱も一本外し、キッチンからの視界はより広くなった。

「キッチンに立っていても、庭まで見渡せて本当に気持ちいいんです」とFさん。「さらにもう一ついいことがあって、キッチンの様子がよくわかるからか、子どもたちが料理に興味を持つようになって…」。今では子どもたちがオムライスを作ってくれることもあるのだとか。「アイランド側に広い作業スペースもできたので、みんなでワイワイ料理するのもよさそうですね」

「料理をしながら家族と自然に会話もできるし、一人の時でもキッチンがとても居心地がよくて」と、キッチン用にチェアを持ち込んで、のんびりお茶を楽しむこともあるそう。「気持ちにもゆとりができて、晩御飯のメニューを考えるのも楽しくなりました」。