TOP家づくり物語台形状の上質な玄関

玄関を移動し、ホールを増築リフォーム

住宅街の一角に印象的なファザードが現れた

Sさま邸は、8年ほど前に購入したハウスメーカーの建売住宅。東南の2面が道路に接する角地で、本来の玄関は南面にある。しかし駐車スペースは敷地東側にあるため、車を停めてから玄関までぐるりと道を歩く必要があり、特に雨の日などは不便を感じていたそうだ。
ただ、玄関の悩みは購入当初からある程度想定していたものだが、リフォームの大きなきっかけになったのは東側への高層マンションの建設だった。もともと東向かいには高い木の生垣が茂っていたが、このたび木が伐採されてマンションの駐車場ができるという。
家の東側はリビングの掃き出し窓があり、マンション駐車場からの目線が室内に入ってしまう。そこで、東の窓の前に増築をおこなって新たな玄関を作り、自宅ガレージからの入りやすさと、リビングのプライバシーの両面を改善することにした。

洗練を感じる上質な小空間

台形状の玄関ホールの突き当りの細い壁面にガラスを入れ、軽やかな抜け感を創出

奥さまはガーデニングが好きで、インスタグラムでいろいろな庭の画像を見ていて「きなりの家」の美しさに目が止まり、リフォームの依頼先に選んだという。
新しい玄関ホールは、敷地の形に沿った細い台形状。ドアを開けると、いかにも感じのよい上質な空間が広がり、窓の先にジューンベリーの枝葉が揺れる。
ホールの突き当たりには、幅1m足らずの細い壁面にガラスを入れ、小さな空間に軽やかな抜け感を創出。天井のダウンライトは設計士の気遣いで壁近くに寄せて配置されており、夜になればあたたかな灯りが、珪藻土のコテむらに美しい陰影をつける。
既存の掃き出し窓は、半分をふさいで玄関からリビングへの出入り口とし、縦格子の引き戸をオリジナルで造作した。

珪藻土のコテむらが出す独特の風合い

造作された玄関収納

縦格子引き戸の上部のガラスから桧の天井を覗かせる

玄関の一角に設けた手洗い

既存の玄関は物干しテラスにリニューアル

物干しテラスの横にちょっとしたレンガの花壇

もともと家の床面は道路面に対してかなり高くなっており、ガレージから玄関ポーチに上がるために階段を設ける必要があった。しかし工事の途中でやはりバリアフリーにしたいということになり、計画を変更。ガレージ全体にゆるく勾配をつけて高低差をなじませ、玄関の上り框に式台を設けてラクに上がれるようにした。
一方、南側の既存の玄関はそのまま残し、玄関ポーチをモルタルで拡張。物干し台と収納式の庇を設け、物干し用のテラスにリニューアルした。そうすると既存玄関は室内干しのランドリールームにぴったりの空間に。「以前は雨の日にはリビングで部屋干しするしかなかったのですが、見えない場所にまとめて干せるようになってとても快適になりました」と、奥さまは笑顔を見せる。

緑に癒されるのびのびとした暮らし

ご主人がこだわったレッドシダーの外壁

ご主人がこだわったのは、増築部分の外壁。濃淡の色味が混在した状態で仕入れられたレッドシダー材の、淡色の板だけを選り分けて用い、既存のサイディングにもなじむすっきりとした上品な色合いに仕上げた。
すぐ前が道路のためほとんど閉め切っていたリビングの南窓は、新たに目隠しフェンスを設置したことで、開け放って空が見えるようになった。フェンス内側には小さな庭をあつらえ、既存の外構に使われていたレンガを再利用して花壇なども作った。
奥さまは憧れていた庭づくりに心癒される日々。「最近は時間があればテラスや玄関の窓辺に座って、庭を眺めていますね。お店で花や木の苗を選ぶのも、とても楽しいです」と微笑む。
玄関も庭も面積的にはごくわずかであるものの、ご家族のずっと叶えたかったことが、その中に凝縮されている。今回リビングなどの生活空間にはまったく手を入れていないが、毎日の暮らしには充分すぎるほどの豊かさがもたらされた。

バリアフリーにした玄関、扉も引戸としている

カーポートも設置しガレージから玄関まで雨の日でも濡れない

玄関の先に見える緑

玄関の増設とフェンスの設置でリビングのプライバシーを確保