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軍艦島

船上からみる軍艦島

世界文化遺産になった廃墟を体験 建築の仕事をする上で、休日に古い建物を見ることは重要なことです。使い続けられている新しい建築も素敵ですが、その役目を終えて朽ちてゆく建物も趣があり大好きです。 その中でも、「軍艦島」は最も訪れてみたい場所でした。 「軍艦島」は正式には「端島(はしま)」と言います。大正時代に建築され、平成27年に「明治日本の産業革命遺産」の一部として、世界文化遺産に登録され最も有名な「廃墟」として有名になりました。 東京ドームのグラウンドおよそ5個分という小さな島ながら、5,200人もの人々が住み、当時人口密度は世界一とも言われました。 その念願の軍艦島に上陸する為、休日を利用して遥々長崎まで足を延ばしてみました。
 
炭鉱後

炭鉱の発展と共に栄えた島

廃墟になった炭鉱の趣を味わう見学ツアー 江戸時代に石炭が発見され、その後明治から大正かけて本格的に海底炭坑として発展した端島は、炭鉱の発展と共に小中学校や、映画館や商店、病院など都市機能を増築し続け、炭鉱都市として栄えましたが、国のエネルギー転換政策を受けて昭和49年に閉山。月日と共に現在のような立派な廃墟になりました。 海上に頭をのぞける岩礁を海面に沿って拡張している為、軍艦のような形の島になったそうです。 上陸する為には、見学ツアーに参加するのが一般的ですが、地元で船を所有する方は比較的自由に上陸できてしまうようでした。
 
煉瓦図づくりの事務所

炭鉱の事務所と士官用住宅

炭鉱と共にあった日本の近代化の歴史に触れる 物の老朽化が進んでおり、多くの場所が立ち入り禁止とされていますが、安全な船着き場の一部のみ立ち入ることができます。 限られたエリアではありますが、上陸すると、その規模の大きさに圧倒されます。 見渡す限り、コンクリートの破片と窓のない建物だらけですが、ベルトコンベヤーの残骸やレンガ造りの事務所にある竪穴の入口に当時の炭鉱夫の仕事の大変な様子が想像できます。 炭鉱の仕事は危険と隣り合わせだそうで、構内で死亡事故も多発していたそうです。
 
最古のRC高層建築

日本最古の高層アパート

最大の見せ場は、日本最古のコンクリート高層アパート 見せ場は、大正時代に建設された、日本最古の7階建て鉄筋コンクリート造の高層アパートです。 鉱員住宅として建てられたこの建物は当時の建築関係者が鉄筋コンクリート造を試行錯誤の上、苦心して完成させた大変貴重な建物です。 現在の感覚で考えれば、コンクリートの梁やスラブの厚みが小さく不安定な印象ですが、風雨に曝されながら今なおここに建つこの建物に、建築関係者として、愛おしい印象を持ってしまいます。 かなり老朽化が進んでいるため、もうすぐ見られなくなる可能性もあるそうで、失われつつある景色と日本の歴史を学ぶ貴重な体験ができました。 設計営業担当 田中賢二